Obituary: Tsutomu Sakamoto
Tsutomu Sakamoto, Professor of the Department of Linguistics at Kyushu University, passed away on July 23rd, 2014 after a struggle against cancer. He was 60.
Sakamoto was born in Nagasaki, Japan, in 1954. He received his Bachelor’s and Master’s degrees in Linguistics from Kyoto University. His initial interest was with metaphors, beginning his study of the time course of Japanese sentence comprehension during his doctoral course. He examined the processing of empty subjects in Japanese, finding that object-control sentences are processed faster than subject-control sentences, even when the object is fronted before the subject. Sakamoto received his PhD in Linguistics from the City University of New York in 1991; his thesis titled “Processing Empty Subjects in Japanese: Implications for the Transparency Hypothesis” was published by Kyushu University Press in 1996.
After working at Kobe Shoin Women’s University, Sakamoto joined the Department of Linguistics at Kyushu University as Assistant Professor. He made a notable contribution to Japanese psycholinguists, especially in the use of event-related brain potentials (ERPs). In 2003, he published a paper in Brain and Language with colleagues, which examined the integration process of sensory mismatch expressions (e.g. red colour vs. ?smooth colour, smooth touch vs. ??red touch). They observed that the mismatch expressions elicited a larger N400 than did the match expressions, and also found that the N400 effects of tactile-visual mismatch expressions (e.g. ?smooth colour) were distributed over the scalp, whereas those of visual-tactile mismatch expressions (e.g. ??red touch) were right-lateralised. In his final year, Sakamoto contributed to a chapter titled “Processing of Syntactic and Semantic Information in the Human Brain: Evidence from ERP Studies in Japanese” in The Handbook of Japanese Psycholinguistics (Mineharu Nakayama (ed.), De Gruyter Mouton).
Sakamoto served as a member of committee of the Linguistics Society of Japan, and was also Director of Kyushu University’s Centre of the Study of Language Performance.
Tsutomu Sakamoto’s ashes were scattered into the sea around Genkai Island, where he enjoyed fishing, on August 23rd, 2014. He will be remembered by his many friends, colleagues, and those he advised throughout his life.
Masataka Yano (Kyushu University)
プロフィール
人文科学研究院 教授 坂本 勉
研究方針の概要
従来、言語学においては、生成文法などを中心として、計算システムとしての人間言語の理論的研究が進められてき ました。しかし、理論的抽象化が進むにつれて、言語計算システムのコアな部分と言語にかかわる様々な認知装置とのインターフェイスが問題 となってきています。ところが、今まで、理論言語学は「人間が言語を実際どのように使うのか」という問いに無関心でした。それは、理論的 抽象化の結果でもあったのですが、この問いに答えるだけの具体的な方法を開発してこなかったのもその一因です。言語学においては、実験音 声学などのごく一部の分野を除けば、実験的手法によって精度の高い良質の言語データを収集するという努力は行われていないのが現状です。
一方、心理学においては、従来から、学習・発達・障害・記憶など、様々な分野で言語が扱われていますが、それは あくまで研究の手段であって、研究の対象ではありません。そのために、言語の構造そのものを無視した実験が行われてしまう危険性がありま す。例えば、話し言葉の音声的側面を無視して書き言葉と同じように処理している研究なども散見されるのです。さらに、ある実験を行って結 果が出たとしても、その結果が何を意味するのかを説明するためには、対象となっている言語データの性質を説明するための理論が必要です。 実験結果を出すことを優先するあまり、その結果を言語システム全体の中に位置付けるという視点が欠けている研究を見ることがあります。
要するに、人間の言語理解のプロセスを明らかにするためには、心理学的な実験の成果を踏まえた上で言語学の理論 に基づいた説明をめざす心理言語学的研究が必要なのです。
- 氏名:坂本 勉(さかもと つとむ)
- 生年月日:昭和 29年(1954年)2月 26日
- 昭和47 (1972) 年 3月31日
- 長崎県立 大村高等学校 卒業
- 昭和48 (1973) 年4月 1日
- 京都大学 文学部 入学
- 昭和53 (1978) 年 3月31日
- 同上 言語学専攻 卒業
- 昭和53 (1978) 年4月 1日
- 京都大学 大学院文学研究科修士課程 言語学専攻 入学
- 昭和56 (1981) 年 3月31日
- 同上 修了
- 昭和56 (1981) 年4月 1日
- 京都大学 大学院文学研究科博士課程 言語学専攻 進学
- 昭和59 (1984) 年3月31日
- 同上 単位取得満期退学
- 昭和59 (1984) 年 9月 1日
- ニューヨーク市立大学 大学院博士課程 言語学専攻 入学(フルブライト留学)
- 平成 1 (1989) 年 3月31日
- 同上 単位取得満期退学
- 昭和53 (1978) 年 3月31日
- 文学士 (言語学) 京都大学
- 昭和56 (1981) 年 3月31日
- 文学修士 (言語学) 京都大学
- 平成 3 (1991) 年 10月 1日
- Ph.D. (Linguistics) City University of New York
- 平成 1 (1989) 年 4月1日
- 松蔭女子学院大学 専任講師(国文学科) 採用
- 平成 4 (1992) 年 10月1日
- 九州大学 文学部 助教授 採用
- 平成12 (2000) 年4月1日
- 九州大学大学院 人文科学研究院 助教授 配置換
- 平成13 (2001) 年 4月1日ー平成26年 (2014) 7月
- 九州大学大学院 人文科学研究院 教授
過去のメンバー(学部生)
-
2014年度卒
- 荒木琴子 形容詞ー名詞間の連体関係における距離の効果についてー事象関連電位を指標としてー
- 2013年度卒
- 草場鈴恵 再分析処理における構造の選好性について 2012年度卒
- 河野翔子 英語母語話者におけるfiller-gap依存関係の構築―日本語母語話者との比較検討を通して―
- 桑原行人 日本語三項動詞文の理解過程について―右方転移文を用いた基本統語構造の検証―
- 徳永奈美 日本語における左側節境界の設定について―時の副詞の呼応関係を中心に―
- 矢野舞子 日本語におけるgap-filler依存関係の構築―ERPを用いた焦点化分裂文の研究― 2011年度卒
- 立山憂 譲歩文の理解過程について―事象関連電位を指標として―
- 見月香織 隠喩文の理解過程について―意味活性の時間的変化―
- 光瀬智哉 呼応関係が左側節境界の設定に与える影響について
- 石川優衣 三項動詞文の基本語順について―動詞情報からの検討―
- 下田美超 照応表現「そうする」の理解過程について―ERPを指標として―
- 村山博美 子どもの比喩表現の獲得について―情動と身体運動感覚を用いた研究― 2010年度卒
- 佐藤仁美 関係節の処理における文脈効果
- 下山恵莉 二重対格制約に関する心理言語学的考察
- 牧本めぐみ 視覚的単語認知における文字位置効果について 2009年度卒
- 出雲結衣 日本語の文処理におけるシカとナイの関係の構築過程について
- 志賀有美 日本語の譲歩表現の理解過程について-条件表現と比較して- 2008年度卒
- 是枝明日香 関係節内の動詞が文処理に与える影響について―関係節の処理負荷を増大させる要因の考察―
- 田中美妃 ガ格3連続文の処理について―左側節境界の設定方法に注目して―
- 田中美穂 文処理における名詞句の有生性の影響―ガ格三連続文に注目して― 2007年度卒
- 水上晴奈 多重スクランブリング構文の理解について―解析装置の動詞予測における格助詞連続の影響― 2006年度卒
- 江本ちひろ 語用論的妥当性が文解釈に及ぼす影響―ERPによる処理過程の検証―
- 小川沙織 『自分』と『自分自身』の解釈におけるプロソディーの影響 2005年度卒
- 浦祐三子 統語解析における副詞句の処理に関する研究 2004年度卒
- 阿部裕介 再分析における困難さの原因の特定―事象関連電位を指標として―
- 斉藤征仁 直喩処理の研究―事象関連電位による検証― 2003年度卒
- 楠美悠 韓国語の関係節の処理に関する考察―曖昧性の影響とその解消に注目して―
- 波奈一直 日本語の文処理における空範疇について―traceとpro―
- 平川祥子 日本語における助数詞の処理について―事象関連電位を指標として―
- 藤原順証 日本語の関係節処理における韻律情報の効果について―聴覚刺激を用いた検証―
- 安永大地 日本語におけるかき混ぜ文の処理負荷に関する考察―事象関連電位を指標とした検証― 2002年度卒
- 岩永真理子 日本語の文理解における助詞『は』『が』『を』について
- 葉玉諭 日本語の文章再生における主語選択について
- 宮城朝一郎 日本語の文処理における格助詞『が』について
- 古賀偉子 日本語の文処理における格助詞『が』と『を』について
- 長野真次 与格主語文の処理について
- 古里文子 日本語における漢字の認知について 2001年度卒
- 田中大輝 項構造の再分析がもたらす文処理への影響について
- 吉長美佳 日本語の文理解における格助詞『が』の特性について
過去のメンバー(大学院生)
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今村 亜子
- IMAMURA, Ako
- 専門分野:言語障害小児全般
- 博士論文:「言語発達過程における『誤り』と『修正』に関する考察」2006年3月27日学位授与 大石 衡聴
- OISHI, Hiroaki
- 専門分野:神経心理言語学
- 博士論文:「再分析処理における一時的構造曖昧性の解消過程について-多重情報間の競合の可能性-」2007(平成 19)年3月26日学位授与 村岡 諭
- MURAOKA, Satoru
- 専門分野:心理言語学
- 博士論文:「日本語における述語の絞込み処理と左側節境界の設定」2008年3月25日学位授与 翟 勇
- ZHAI, Yong
- 専門分野:心理言語学
- 博士論文:Developmental Shift of Parsing Strategies: Processing Empty Subject Sentences among L1 and L2 Learners, 2009年10月31日学位授与 安永 大地
- YASUNAGA, Daichi
- 専門分野:心理言語学
- 博士論文:「日本語における要素間の関連付け処理過程」2010年3月25日学位授与 劉 擇明
- LAU, Chaak-ming
- 専門分野:心理言語学 備瀬 優
- BISE, Yu
- 専門分野:心理言語学 矢野 雅貴
- YANO, Masataka
- 専門分野:心理言語学
- 博士論文:Temporal Dynamics of Syntactic and Semantic Prediction, 2016年3月25日学位授与 ストランビーニ・ニコーラ
- STRAMBINI, Nicola 立山 憂
- TATEYAMA, Yuki
- 専門分野:心理言語学 金 ヨアン
- KIM, Yoan
- 専門分野:心理言語学